次に、クラミジア、淋菌の感染が最近特に若い世代で増加してきている話に移ります。

 特にクラミジアは世界で最も世界で最も感染者の多い性感染症と言われ、日本でも100万人くらい感染者がいるとも言われています。ごく最近の日本性感染症学会で14-25歳の無自覚の一般日本人女性を検査したところ、5人に1人(同年代の無自覚男性は10人に1人)陽性であったとの報告もありました。クラミジアも淋菌もどちらも膣内というより、その少し上の子宮の頚部というところに感染します。感染してもあまり自覚のない人(クラミジアで約80%くらい)、少し増える人、たまに不正出血を伴う人から、菌がその上の子宮や卵管にまで広がって骨盤内に及ぶとその程度に応じて、下腹部痛がしょっちゅう起こったり、我慢できない下腹部痛と37-39度までの発熱も伴うことがあります。

 またもっと腹部全体に菌が広がると、特に肝臓や横隔膜の下にたまりやすいので、右の上腹部(胃のあたりや肋骨の下)まで痛くなり、婦人科ではなく内科や外科(手術をして)で先に見つかることもあります。特に炎症が卵管より広がった場合には、その後の卵管の閉塞や狭窄、骨盤内臓器の癒着により不妊症となってしまう場合もあり、感染の早いうちに発見し、治療しなければ怖い病気です。感染者の約40%は骨盤内にひろがり、そのうち15−20%は慢性の下腹痛、20%くらいは不妊症、5-10%くらいは子宮外妊娠を起こすというデータもあります。

 検査は簡単で、子宮頚部を綿棒でこすって調べると1週間ほどで結果がわかります。治療も簡単で、最近は内服の抗生物質を1回だけ飲む便利な方法が推奨されています。もちろんかかった場合は必ずパートナーも治さなければ、またかかります。パートナー自身も排尿痛などの自覚症状のある場合(40−50%)、ない場合がありますが、必ず泌尿器科に受診してもらって投薬を受けてもらってからセックスを再開するようにしましょう。コンドームの使用はこれらの感染予防には有効です(ヘルペスやコンジローマは外陰部の感染なので無効ですが・・・)。感染が卵管卵巣、骨盤に及んでかなりひどい症状が出ると入院や数日点滴したりして治療しますが、前述の肝臓の裏の横隔膜まで広がった場合は病変を取り除くために手術になる場合もあります。

 淋菌はクラミジアよりは男性では膿様の尿、女性でも膿様のおりものが出る場合が多いですが、やはり感染していても症状に気づかない人も多くいます。淋菌もクラミジアと同様に検査で見つかれば、感受性のある抗生物質を一定期間内服、または点滴注射する方法で治療しますが、以前はよく効いていた抗生物質が耐性菌の出現によりだんだん効きが悪くなってきたので、最近は効く抗生物質の選択が困難になり、すぐにはなかなかな治らなくなってきています。さらに最近は、セックスの多様化により咽頭や直腸でクラミジアや淋菌が見つかる場合も多くあり、感染の波及をさらに広めたり、診断や治療をより困難にしてきています。

 ちなみにクラミジアの潜伏期(感染してから発症するまで)は1-3週間、淋菌は2-7日といわれています。

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